私共、公立幼稚園の問題を考える会は、一般市民の有志でつくった団体です。メンバーは公立幼稚園の保護者の他、今回の荒川区立幼稚園の再配置計画に関心のある人です。
【これまでの経過】
2022年6月29日、荒川区教育委員会事務局にあたります学務課より、荒川区議会の文教・子育て支援委員会へ「荒川 区立幼稚園の方向性について(素案)」(以下、素案)が提示されました。内容は、荒川区立幼稚園の再配置計画です。荒川区にある8つの区立幼稚園、1つのこども園のうち、5園を廃園にするという内容です。後ほどご説明いたします。
この日の文教・子育て支援委員会では素案に対する意見交換が行われました。
また、パブリックコメントを実施すること、8月31日の文教・子育て支援委員会で最終案を報告し、今年の新入園申し込みの募集要項に内容を反映することが説明されました。
2022 年 7 月 1 日~14 日 荒川区が区報および HP にて素案へのパブリックコメントを募集いたしました。476件の意見が寄せられました。通常の案件ですと数十件ということで、通常の10倍となる非常に多くの意見が寄せられました。全てのパブリックコメントは荒川区のHPから見ることができます。
全体的に、廃園に否定的な意見が多いです。これはそもそも素案の周知、説明会が幼稚園関係者を中心に行われていて、広く区民に周知していないことの裏返しとも言えるかもしれません。
一方で、区立幼稚園の教育を評価する、これほどの件数のパブリックコメントがあったことは注目に値するのではないでしょうか。子供の意見とみられるものも多数寄せられています。行政サービスの中でも、また一般企業の提供するサービスにおいても、これほどユーザーに愛され支持されるサービスは中々ないように思います。
個々のパブリックコメントの説明は割愛いたします。
このような中、
2022 年 7 月 11 日 有志により公立幼稚園の問題を考える会(以下、本会)が作られました。
会の活動は大きく分けて2つあります。
1つ目は、区議会への陳情です。
こちらは2022 年 7 月 14 日~9 月 8 日にかけ署名を集めました。8月の4回の街頭宣伝を交え、区民への周知を図りながら、2022 年 8 月 31 日に区議会へ提出いたしました。賛同者は 9 月 9 日時点で5486名となっております。陳情内容につきましては、後ほど読み上げます。
2つ目の活動は、2022 年 7 月 25 日荒川区長、教育委員長、学務課へ「公立幼稚園の再配置計画案 に関する陳情書」を提出いたしました。
一方、行政の動きとしましては、2022 年 8 月 31 日 学務課より文教・子育て支援委員会へ再配置計画の最終案が提示され、予算や条例改正を含まない内容ですので、議決はなくそのまま決定となっております。
【今後の予定】
本会が提出した陳情書が2022 年 9 月 20 日 荒川区議会の文教・子育て支援委員会で採択・不採択が議論される予定です。また、その議論を参考にしながら、2022 年 9 月~10 月 荒川区議会の本会議で採択・不採択が決議される予定です。
【荒川区立幼稚園の再配置計画の説明】
計画には、2022 年 6 月 29 日の素案と、2022 年 8 月 31 日の最終案が2つあります。
素案は荒川区のHPから入手することができますが、最終案は現在のところ入手することができません。お手元の資料は議員の方からいただきました。すでに議会を経ていますので、内容は一般公開可能です。
この2つの骨子はほぼ変わりませんので、最終案の方を使ってご説明いたします。
まず現状です。最終案の3ページ、表をご覧ください。
H25年からR4年までの学齢数、つまり3歳から5歳までの人数があります。R元年に最大となっていますが、その後減少しています。R2年以降の急減は、コロナの影響もあるかもしれません。
その下に区立幼稚園の園児数。H25年から減少を続け、R4年は半数以下となっています。
その下に私立幼稚園の園児数。こちらはいったん増加していますが、R4急激に減少しています。()の中は園児のうち、区民である園児数です。
最後に保育園の3歳から5歳の園児数。こちらは増加傾向です。()の中は同じく、区民である園児数です。
この表の区立幼稚園の園児数と、私立幼稚園および保育園の()の中の園児数を足しても、一番上の学齢数より少ない人数となります。
差分の人数は、区外の私立幼稚園あるいは保育園に通っている園児、またはいずれにも通っていない幼児となります。
区立幼稚園の園児が年々減っている理由として、資料には共働き世帯の増加とあります。
保護者の視点としましては、
・時間延長の預かり教育がない
・週4日お弁当がある
といったあたりが、共働き世帯が区立幼稚園を選びにくい具体的な理由と感じています。
なお、区立日暮里幼稚園のみ預かり教育がありますが、お弁当もあります。
また、区立幼稚園は私立幼稚園のような説明会がありません。個別に見学の申し入れは可能ですが、説明会に行くよりも保護者の心理的ハードルが高いです。区立幼稚園の魅力は子供の発達を中心においた教育手法や、経験豊富な先生方が子供のみならず親の子育てを力強く支えてくださることなど、主にソフト面です。説明会がないとこういったソフト面の魅力は伝わりにくいものです。また、区で発行している幼稚園ガイドには区立幼稚園の記載がなく、未就園児保護者にその存在が知られにくいことも要因の一つと考えています。
次に5ページの表をご覧ください。
荒川区では特別な支援を要する幼児は私立幼稚園に入園を断られたり、途中で退園せざるを得ない状況にあり、区立幼稚園がその受け皿となっています。
表の一段目は、特別な支援を要する園児数の推移で、増加傾向にあります。
9ページの図をご覧ください。
これは荒川区の地図です。
再配置計画は8園ある区立幼稚園と、1園あるこども園の幼稚園部分のうち、5園を廃園とする内容となっています。
四角で区立幼稚園、私立幼稚園の場所が示してあります。
廃園予定の園は、濃い色の四角の園です。
次に12ページの表をご覧ください。
こちらは、廃園までのスケジュールになります。
令和6年度の年少が最終受け入れとなり、この園児の卒業する令和8年をもって閉園となります。
また令和4年、つまり今年の募集案内から、令和6年度が最終受け入れであることを通知します。
募集案内は例年どおりですと10月に配布され、11月2日と4日が申し込み日となります。
最後に13ページの四角内をご覧ください。
荒川区では令和2年から学級編成の最小人数を募集要項に記載しています。
応募人数が7名以下の場合はクラス編成が行われません。その学年はなし、となります。
また2年連続クラス編成が行われない場合、廃園を検討します。
もし廃園予定の園への応募が令和4年、令和5年と7名以下だった場合、廃園が最大2年早まる可能性があるということです。
【本会の陳情書の読み上げ】
「荒川区立幼稚園の方向性について(素案)」の改善と区立幼稚園全8園・汐入こども園宣伝促進の陳情書
趣旨。
「荒川区立幼稚園の方向性について(素案)」の改善と区立幼稚園全8園・汐入こども園の宣伝の促進を求めます。
理由。
「荒川区立幼稚園の方向性について(素案)」を受けまして、あまりに性急な内容に全園の保護者や子どもたち、また卒園した子どもたちの関係者や地域の方々は大変に困惑しております。
荒川区立幼稚園はそれぞれの園が特性と魅力を活かし、子どもたちが安心してのびのびと遊びの中から学びを受けることができる環境にあります。
親子で歩いて通える場所にあり、保護者同士も毎日の送り迎えの中で交流を持つことで、保護者にとっても学びの場になっています。個性が尊重され、誰もが平等に教育を受けることができ、特別な支援を必要とする子どもたちの受け皿となっている点も大きな役割のひとつだと考えています。
このような区立幼稚園は子ども、保護者、地域に必要とされています。
しかしながら、条件のみの周知に留まり、区立幼稚園の教育の質の良さを伝えきれていないと感じます。
今一度荒川区立幼稚園の良さを再確認して頂き、全8園・汐入こども園の宣伝促進と今回の素案について区民の声を聞き、時間をかけて再度検討していただけますようお願い申し上げます。
以上の内容の陳情書を提出いたしました。
【一人目の保護者の話】
区立幼稚園は、支援が必要な子の受け皿にもなっていますが、その子どもや保護者は、しっかり加配をつけてくれるという理由だけで区立幼稚園を選んでいるわけではありません。集団の中で成長を促したいけれど、支援が必要な子がのびのびと療育を受けられる、ある程度の小規模な集団であることが重要です。
区立幼稚園を減らされてしまうと、小規模な集団を選びたいという支援が必要な子どもは、どこに入れるのでしょうか。
早くから療育を受けることが大切であるならば、その時期の環境をしっかり整えることもまた、大切になってくると思います。
ここからは区立幼稚園の特色についてお話したいと思います。
私は、1人目の子どもを幼稚園に入れるときに、初めての育児に疲弊していたこともあり、私立幼稚園と区立幼稚園の情報を見比べ、なるべく長く預かってくれる私立幼稚園に魅力を感じました。他にも、お金を出せば給食があり、園バスがあり、習い事ができたりすることも大きいと思いました。
結果、区立幼稚園に入れたわけですが、区立幼稚園に入れるにあたってネックだと思っていた1つ目は預かり時間が短いことです。
しかし、14時に幼稚園が終わった後に園庭や近くの公園で遊ぶことは、普段遊んでいるクラスのお友だちとの関わりを、保護者が直接見られる大切な場だと気付かされました。
休日に初めて出会う子とお友だちになって遊ぶのとは違い、毎日一緒にいる関係だからこそ、自分の主張をしっかり出して言い合う姿もあります。
保護者と一緒に、保護者も一緒に解決方法を学んでいくことで、小学生になってからぶつかる様々な問題と上手く付き合っていけるようになります。
2つ目にネックだと思っていたことは、給食がなくお弁当だったことです。
ですが、入園後はおにぎり1つから始まり、徐々におかずを増やして慣らしていくことで、完食できる量を保護者が作ってくれるということを積み重ね、みんなとお弁当を食べる時間は楽しいという思いが生まれます。
子どもが小学生になった今も「学校の遠足はママのお弁当が食べられるから楽しみ」と言ってくれているので、手の込んだお弁当でなくても子どもたちには大切な思い出として残っているし、離れていても保護者を思い出す大切な時間なのです。
3つ目にネックだと思っていたことは、園バスがないことです。
しかし、送り迎えのときに家庭であったことを先生と共有し、また幼稚園であったことを共有してもらうことで先生と一緒に子育てをしている意識が強くなります。
クラスの保護者やさらに学年の枠を越えて保護者と仲良くなることで、子どもが関わる人の数も大きく増えます。保護者同士も交流が増えることで、学び合ったり励まし合ったり強い絆が生まれました。
私は教育というと、机に向かって勉強すること、幼稚園で良い教育をしてもらうものだと思っていました。
子どもを区立幼稚園に入れて学んだことは、教育は遊びの中や生活の中にたくさんあるということです。それを、幼稚園の中だけで終わらせるのではなく、家でも気付かせたり考えたりすることで、幼稚園と家庭との1日が上手く繋がって成長が促されるのだと思います。
園内での学びを先生がきちんと共有してくれるので、その学びが家庭へとしっかり繋がっていきます。
ある園では、お迎えのときに先生が「今日は園庭で取れたみかんを食べました。分けかたをみんなで考え相談しながら分けて、余りもどうしようかと相談しました。」こんなふうに伝えてくださいました。
園庭で野菜を育てたりしている園もあり、子どもたちは、お水をあげて育てる喜びと、数を数えたり大きさや重さを量って学びに繋げること、お友だちと相談して人の意見を聞いたり自分の気持ちを言葉にする大切さを学びます。
各園の教育は、先生方が研修等で学んできて工夫しながら作ってくださっている環境なのです。
こんな他区にも誇れる教育をしている区立幼稚園を、私は十分に宣伝しきれていないと感じています。
宣伝については、各園の保護者が園の良さを知ってもらおうと時間を割いて、素晴らしいリーフレットを作ってくれました。未就園児の保護者の目線に立ち、入園前に不安に思っていることや疑問を解決できるように作られています。
園児募集のポスターを作ってくれたところもあり、それぞれ近くのふれあい館や、お子さん連れの方が立ち寄りそうな施設に保護者たちが持ち込み、設置をお願いしている現状です。
良い子育てとは…良い親子関係とは…その正解は子どもが大きくなってどうなったときに正解だったと感じるのかはわかりません。
でも今子どもたちが私に毎日かけてくれる感謝の言葉を思うと、真剣に子どもたちと向き合い、関わってきて良かったと思います。
保護者が一緒に問題に向き合ってくれる姿は、その後の子どもとの信頼関係に大きく影響するのではないでしょうか。
小学生以降は、学校で過ごす時間や放課後お友だちと過ごす時間が主になり、家族との時間が減ります。しかし、就学前に築いてきた親子関係は、その家庭の基礎の姿になると思います。
その基礎を築いてくれたのは区立幼稚園です。
私が区立幼稚園を選ぶにあたってネックだと思っていたことは、全て、私と子どもたちとを強く繋ぐ、絆へと形を変えました。
共働きが増える昨今、幼少期に、保護者が子育てを主で担う大切さを、実践できる家庭ばかりではありません。子どもにこれだけ関われること、素晴らしい環境で子育てできることをとても恵まれていると感じます。
そして、この素晴らしい環境を作っている荒川区に感謝しているとともに、これからの子どもたちもこの環境で育っていってくれることを切に願います。
【二人目の保護者の話】
少し長くなりますがまず一個人として私の経験をお話して、その後私からの訴えをお話したいと思います。
素案を見た時、理解できると思いました。私は元々合理性を重んじてきました。区立幼稚園の園児が半分になったから、幼稚園の数も半分にする。非常に合理的でわかりやすいです。でも、何か…周りのお母さんの話を聞いていると何かあるような気がしていました。自分の気持ちも素案に賛成か反対かも定まらないまま過ごしました。
今は、それが何なのかわかります。数字というのはこの世界を表現する手段の1つでしかありません。数字は世界の全てを表現できるわけではないのです。この世界には質感とか、感覚とか、体験とか、数値で表現できないものがあります。
つまり、数値による合理性でつくられた計画は全体の一部しか見ていない、不完全なものと言えます。
そして、幼稚園は教育の分野ですから、人を育てる時には、数値と同様に、質感や感覚や体験といったものも大事になります。
話を戻します。
立場上流れに巻き込まれた訳で、娘も「幼稚園をなくさないで欲しい」なんて言うのですが、あまり関わりたくない、というのが正直なところでした。
下の子もいないし、廃園になる時に荒川区にいるかどうかも分かりません。幼稚園には1年ちょっとお世話になっていますが、廃園反対、と立ち上がるほどのこだわりありませんでした。廃園計画は合理的で、つまり当時の私としては正しいと思っていましたし、全園残すという反対意見はありえないと思っていました。
何より、平和とは程遠い状態でした。
私は平和に日常を過ごすのが大好きです。
でも廃園計画という、非日常が来た幼稚園は分断と闘争の様相を見せました。
分断とは、計画に賛成か反対か、反対運動に参加するか否か、廃園予定の園か残る園か、などわずかな立場の違いにより、昨日まで仲良くしていた人間同士の間に溝ができることです。
闘争とは、自分と意見の異なる相手を敵とみなし、発言や思想が攻撃的になることです。
関わらないのが一番平和なのではないか。そう思えました。
でも、平和とは何なのか。
いかなる状況においても穏やかに、どんな考え方の人にも、自分と反対意見の人にも心を寄せ、思いやりと優しさを発揮する。
これが平和なのではないかと思いました。
世の中には色んなものの見方があり、自分とは違う意見もある。
同じ人でも意見が合うこともあれば、合わないこともある。
それなのに、たった一つの事象に対する意見が合わないだけで、相手を敵と思うとは?
敵の存在を認めず、意見を聞かず、その人権を考慮もしない。
そうした態度を当然とする思考が、戦争につながるのではないでしょうか。
もし、誰もが自分と違う意見があることを認め、相手の人権を尊重し、気遣いと感謝を忘れなかったら?
おそらく、世界は色々な意見にあふれ、そして平和になるでしょう。
そういう平和な世界を実現する一人になりたくて、
平和は実現可能だという姿を子供に見せたくて、
私はあえて、会の活動に参加することに決めました。
どのような意見の方も敵としない。
どのような意見の方に対しても思いやりと優しさと感謝を忘れない。
長くなってきましたので、そろそろ本題に向けて話を進めます。
先ほど、素案や最終案は不完全と考えているとお話しました。
一方で、素案や最終案を取り下げる、という意見も不完全だと思っています。
環境が変わる中、自分達だけ現状維持というのはありえません。
そんなことを続ければ苦しくなるだけです。
幼稚園を残すなら、預かり教育の実施、給食の実施、宣伝の強化により園児数を増やす努力が必要になります。
教員のなり手は不足していますが、預かり教育をすればさらに必要になります。
退職した教員の再雇用の検討が必要かもしれません。
荒川区の区立幼稚園の教育は優れていますから、こうした施策は民業である私立幼稚園を圧迫するかもしれません。
私立幼稚園も存続させるためには、私立幼稚園の教員に研修の機会を提供するなど、行政の支援が必要かもしれません。公金で支援をするとなれば、私立幼稚園の保育内容の評価も必要になるでしょう。
荒川区では区立幼稚園を担当する学務課と、私立幼稚園を担当する子ども家庭部 子育て支援課は別部署ですから、こういった区立幼稚園と私立幼稚園の連携を進めるには、行政の努力と区民の声が必要になります。
私立でも区立でも、子どもが喜んで通える幼稚園がたくさんある荒川区であって欲しいです。
預かり教育で共働きの保護者が増えれば、PTA活動が破たんするかもしれません。
PTA会員を保護者と教員の他、地域の方や信頼できる外部の方にまで広げるなど、これまでにないやり方が必要でしょう。親の意識改革や安全性の担保など未知の課題があります。
子供は幼稚園を残して欲しいと言いますが、実現はそう簡単ではありません。
実現するためには、全ての大人たちが今までのやり方やこだわりを変えないといけないと思うのです。
大人たちが立場を超え、協力する必要があると思うのです。
子供の願いは非現実的で、取り合いたくないと感じます。
でもその難しさに向き合うことで大人を成長させ、未来をつくるのです。
今は、歴史の転換期だと思っています。
社会環境が変わり、気候が変動し、コロナのような危機がおとずれるたびに、
それまで蓋をしてきた問題がどうしようもないくらい表面化するでしょう。
いくつもの、これまで当たり前にやってきたことが続けられなくなるでしょう。
荒川区の幼稚園の問題は、そういった世界の大きな流れの一端です。
でも危機の度に、廃園か、現状維持かで争っていたら、
どんどん施設がなくなって、子育てはしにくくなり、自治体の活力が失われていきます。これでは持続不可能です。
必要なのは対立する二つの意見を両立する新しいあり方です。
これを創造するには時間と、多くの知恵が必要です。
区立幼稚園の方が私立幼稚園よりも公金がかかることを気にする議員の方がも多くあります。
区民の資産の適正運用、私も一区民として、そういう考えを念頭に置きながら行政が運営されていることをありがたく思います。
荒川区の歳入およそ1,070億円に対し、幼稚園費は8.5億円、0.7%です。
今すぐ廃園を決めなければならないほどなのでしょうか。
私は素人ですので何とも言えません。
ただ私達は、すでに問題を把握し、先送りせずにこうして議論しています。
計画では廃園になった教室の活用として、支援学級をつくるというのがあります。
困っている方のためになるなら、廃園もありじゃないか、
そう思って複数の当事者のお母さんにお話を聞きました。
支援学級が不足しており、お子さんや保護者に選択の余地がほとんどない状況は確かでした。ただ、幼稚園の廃園を望んではおられませんでした。なぜならば、区立幼稚園を必要としている人達と、支援学級を必要としている人達は同じ人だからです。
ニーズが少ないと見られている区立幼稚園を廃園にし、ニーズが増えている支援学級に転用するのは一見筋が通っているように思われます。ですが、当事者からの視点は違います。確かに支援学級の選択肢は欲しい、けれどそれを得る代わりに幼稚園の選択肢をなくします、と言われているのです。両方必要です。今回の計画はいわば、不自由されている人の資源をとりあげ、不自由されている人に返す、という非常に狭い中で資源再配分が行われています。
この点はぜひ改善をお願いしたいところです。
ただ、学務課の権限の範囲内でやろうとすれば、こういう計画にならざるを得ないというのは理解できます。
他の自治体では、子どもや高齢者を横断する、複合行政サービスなどがありますが、荒川区では難しいでしょうか。
陳情書にありますよう、時間をかけて再検討して欲しい。
何をしてほしいのか。
まず第一に、子供の意見を聞いてほしい。
3歳、4歳でも意見は表明できます。5歳になれば大人と十分コミュニケーションできます。幼稚園を卒業した小学生は、もっとはっきりと自分の意見や経験を述べることができるでしょう。
子供の話を聞いて心を洗われるとか、そういうことではないのです。
子供は幼稚園の利害関係者、一番のステークホルダーです。
一人の個人として、彼らの存在を尊重し、大人の冷静さをもって意見に耳を傾けて欲しい。
意見表明はこどもの権利です。彼らは親と同じ意見とは限りません。
そして、意見表明する機会は大人がつくるものです。
これは議員の方々、学校関係者、保護者にご協力をお願いしたいです。
次に、支援を必要とする子供とその保護者の意見を聞いて欲しい。
憶測で計画の是非を判断しないで欲しい。
こちらも議員の方々、学校関係者、保護者にご協力をお願いしたい。
区立幼稚園には支援を必要とする子供が多いのですから、再配置計画は社会的包摂の計画です。まず当事者の意見を聞いてください。
丁寧に話をして、区民と政治のつながりをつくってください。
計画は行政の部署を超えて、あるいは区民の知恵も巻き込んで、作ってください。
これも区民の声と議員の方々のご協力をお願いいたします。
そして、一人でも多くの区民のみなさまがこのことを知り、教育や子育てに興味を持ってくださいますよう。その力が人を動かし、子供と未来を育てると思います。
以上です。